知的で堂々とした姿、絹のような長い直毛が魅力的のヨークシャー・テリア。この被毛は生涯のうちに7回色が変わるといわれており、その美しさから「動く宝石」と呼ばれています。
日本でも人気の小型犬で、おしとやかな雰囲気のヨークシャー・テリアですが、テリア種らしく陽気で活発です。しかし神経質な部分も持ちあわせており、ストレスがかかると体調を崩したり、病気にかかりやすい傾向にあります。
異変や病気に少しでも早く気づいてあげられるように、ヨークシャー・テリアがかかりやすい病気や症状、原因や予防法、治療方法などをご紹介します。
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう・パテラ)
膝のお皿の骨が、正しい位置からずれたり、外れたりする病気です。形成異常がある先天性の場合と、転落などでの強い衝撃でおこる後天性があります。
小型犬は内側に脱臼することが多いと言われています。スキップをするように歩いていたり、3本足で歩いたり、足を引きずる歩きかたなどをしていたら膝蓋骨脱臼の可能性があります。
膝蓋骨脱臼の予防法や治療法
予防としては、関節に負担の少ない生活をさせてあげることです。
ソファーやベッドなどから犬が飛び降りることがありますが、膝に負担がかかります。床にマットを敷いてあげましょう。抱っこをして床に降ろすときも、できるだけ低い位置で降ろしてあげてください。
気をつける時期は年齢不問ですが、とくに動きの多い1歳~5歳ごろや、骨が弱くなる9歳以降は注意が必要です。
お薬で治る病気ではありせんので、治す場合は外科治療になります。手術をするかしないかは進行度や年齢によってかわってきますので、かかりつけ先生と相談しながら決めていきます。
気管虚脱
ヨークシャー・テリアは呼吸器系が弱く、気管虚脱をおこしやすい犬種です。気管本来の強度を失い、押しつぶされて変形してしまう病気です。
症状としては、呼吸困難になったり体温調節がむずかしくなり咳が出るようになります。とくに「ガーガー」と言うガチョウ鳴きはもっとも典型的な症状です。
運動や興奮して吠えたあと、ご飯や水を飲んだ後に乾いた咳をするようになったら、気管虚脱の可能性があります。
気管虚脱が悪化すると、舌が紫色になるチアノーゼの症状が現れることがあります。気管虚脱の発症は中年齢から高年齢に多いですが、若齢でも起こりえる病気です。
気管虚脱の予防法や治療法
予防法は、普段からなるべく興奮させないようにしつつ、適度な運動をさせることです。急激な温度の変化がないようにすることも予防につながります。
ヨークシャー・テリアは首が細いので、呼吸を妨げないためにも首輪ではなくハーネスをお勧めします。肥満も気管虚脱のリスクを高めますので、太りすぎには気をつけましょう。
苦しそうな呼吸をしていたり、舌の色が紫色に感じたら、すぐに受診してください。
門脈体循環シャント(門脈シャント)
門脈体循環シャントは、門脈と呼ばれる血管と大静脈血管との間に異常な連絡路(シャントと呼ばれるもの)が生じ、解毒されるはずの毒素が体の中を循環してしまう病気です。
門脈体循環シャントの原因のほとんどは先天性ですが、肝硬変や慢性肝炎といった肝臓の病気によって、後天的に発生するときもあります。
原因が先天性の場合は、発育不良や仔犬の割に元気がないなどの症状がみられます。後天性の場合は、お腹に水がたまったり、食欲がなく体重がへるなどの症状が現れます。悪化すると肝機能障害をおこし命を落とすことがあります。
ヨークシャー・テリアの場合は先天性が多く、2歳未満で発症するケースが多く見られます。
門脈体循環シャントの予防法や治療法
門脈体循環シャントは先天的な要因で発生する病気のため、残念ながら予防することができません。
軽度の場合はあまり症状がみられませんが、血液検査や尿検査で見つかる場合もありますので、好発犬種であるヨークシャー・テリアを飼っているひとは定期的に受診しましょう。
症状が軽い場合や後天性の場合は、食餌療法や投薬などの内科治療で症状を抑えます。先天性が原因の場合は、若いうちの外科手術により完治が望めます。
尿道結石
尿道結石は、膀胱などでつくられた結石が尿道に流れ、尿道がつまってしまう病気です。
症状としては、結石が尿道をふさいでしまうため、尿の出が悪くなります。そのため1回の尿量が減ったり、尿自体が出なくなることがあります。
何度も排尿姿勢をとるのに、よく見ると尿がほとんど出ていなかったり、出た尿がピンク色や赤色をしているときは血が混ざっています。
結石の種類はいくつかありますが、ヨークシャー・テリアは「ストルバイト結石」が多い傾向にあります。
尿道結石の予防法や治療法
膀胱炎などの感染症が原因で、尿がアルカリ化を起こすことにより形成されるといわれています。
予防法や治療方法として、水分を多く摂取させるようにします。定期的な排泄をうながして、膀胱の中に細菌が増えないように心がけます。
獣医師の指導のもと、処方食を与えたりウェットタイプのフードで摂取する水分量を増やす、といった対策をします。抗生剤や消炎剤などの投薬治療を行うときもあります。
排泄姿勢をとったときから排泄が終わるまで、普段から量や色などを確認しておくことが大切です。
病気や怪我を知って一緒に長く生きよう
ヨークシャー・テリアの平均寿命は15歳といわれていますが、長生きした犬の犬種の中に、ヨークシャー・テリアが多く存在します。
動く宝石といわれるヨークシャー・テリアですが、その美しさに魅了され「宝石のように大切に扱う」飼い主さんが多く、長生きに繋がっているのかもしれません。
この他にも、水頭症、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、僧帽弁閉鎖不全症にもなりやすい傾向があります。
かかりやすい病気を先に把握しておけば、予防につとめたり気づくことも増えます。変化に気がつき病気の発見が早ければ、治療の選択肢が増えたり治る病気もあります。
ヨークシャー・テリアは、飼い主さんに献身的で愛情深い犬種です。お互いの信頼関係を深めて、体調管理と一緒に精神的なケアにも気を配りましょう。